日立製作所の徳永俊昭社長兼CEOは、同社イベントで「フィジカルAI革命」を強く打ち出した。フィジカルAIとは、現実世界を理解し、自律的に判断・動作するAIを機器や社会システムへ組み込む考え方だ。
鉄道、エネルギー、製造といった社会インフラを持つ日立がこの領域を語る意味は大きい。AIの競争軸が、画面上のチャットから現場運用へ広がっているからだ。
背景にあるのは現場人材の不足
ITmediaの報道によると、徳永氏は2040年に1100万人分の労働力が不足するという推計を示し、「守るべきものは増えるが、現場を支える人は増えない」と危機感を示した。
社会インフラは、熟練者の経験、現場判断、保守運用の積み重ねで成り立っている。人手不足が進むなか、AIが現場状態を把握し、運用を改善し続ける仕組みは、効率化だけでなくレジリエンス確保の手段になる。
日立が示した4ステップ
徳永氏はフィジカルAI実装に向け、現実世界を学ぶ、デジタルツインで試行する、特定業務のルールを学ぶ、現場で実践する、という4段階を示した。NVIDIAのOmniverseのような基盤が第1〜2段階を支える一方、日立は第3〜4段階、つまり業務ルールと現場実装に注力すると説明している。
この整理は実務的だ。ロボットやAIモデルの性能だけでは、鉄道や電力、製造現場では使えない。安全基準、品質基準、運用手順、例外対応を含めて学習・検証する必要がある。
競争優位はAIモデル単体ではなく現場知にある
日立はIT、OT(制御・運用技術)、プロダクトを長年扱ってきた企業だ。AIモデルそのものの大規模化では米国勢が先行しても、現場データ、設備、保守ノウハウ、顧客業務を統合する力は国内産業企業の武器になり得る。
企業が学ぶべき点は、フィジカルAIを単なるロボット導入として見ないことだ。現場の暗黙知をどう形式化し、デジタルツインでどう検証し、本番環境でどう安全に改善するかが成否を分ける。
導入時の注意点
社会インフラにAIを入れる場合、誤判断の影響は大きい。責任分界、監査ログ、人間による介入条件、サイバーセキュリティ、ベンダーロックインをあらかじめ設計する必要がある。フィジカルAIは派手な未来像であるほど、地味な運用設計が重要になる。
参考リンク:ITmedia ビジネスオンライン


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