ケンブリッジ大学の遊び・教育・発達・学習研究センター(PEDAL)は、幼児向けAI搭載おもちゃに関する調査報告書を2026年3月13日付で公開した。ロンドンの児童センターで3〜5歳児14人を対象にした直接観察調査の結果、現行のAIおもちゃは子どもの想像的な遊びや感情の機微を十分に理解できないことが明らかになった。AIと子どもの関係性に関する安全基準の策定を求める内容となっている。
観察調査──Curio Interactive社の「Gabbo」を使用
研究チームは、AI搭載おもちゃの代表例としてCurio Interactive社が開発した対話型おもちゃ「Gabbo(ガボ)」を使用した。Gabboは大規模言語モデルを搭載し、子どもとの自然な対話を目的として設計されている。研究者は14人の幼児がGabboと遊ぶ様子を直接観察し、インタラクションの質を分析した。
AIが「ごっこ遊び」に対応できない
調査で浮き彫りになった課題の一つが、想像的遊び(ごっこ遊び)への対応力の欠如だ。子どもが「一緒に寝るふりをしよう」と誘った際、AIは事実に基づく説明のみを返し、遊びが中断してしまうケースが確認された。子どもの創造的で予測不能な遊び方に対して、現行のAIは柔軟に応じることが難しいという。
複数人の会話・親子遊びにも未対応
もう一つの課題は、社会的相互作用への対応だ。子どもの遊びは多くの場合、親や友達との共同行為として成り立つが、現行のAIおもちゃは1対1の対話を前提としている。複数人での会話や、大人と子どもが一緒に遊ぶ場面での適切な応答ができないことが指摘された。また、会話の順番交代(ターンテイキング)といった基本的な社会的スキルの促進にも限界がある。
パラソーシャル関係のリスク
報告書はさらに、子どもがAIおもちゃに対して「パラソーシャル関係」──一方的な親密感──を形成するリスクについても警告している。AIを人間の友人と同等に扱うことで、社会的発達に影響が出る可能性がある。AIおもちゃは人間ではないことを子どもに適切に伝える設計が求められるとしている。
研究の背景と提言
報告書によれば、幼児向けAI玩具に関する科学的研究は2019〜2024年の間にわずか7件しか存在しない。同分野の研究基盤が極めて脆弱な状態であることも問題視されている。研究チームは以下の4つの提言を行っている。
対象 | 提言内容 |
|---|---|
保護者 | AIおもちゃとの遊びに積極的に関与し、AIの限界を子どもに説明すること |
玩具メーカー | 複数人会話・親子遊びへの対応機能を実装すること |
LLMプロバイダー | 子ども向けAI利用の安全ガイドラインを明確化すること |
政策立案者 | AIおもちゃの過度な感情的アピールの制限やラベル制度を検討すること |
AI搭載製品が子ども向け市場に急速に浸透するなか、技術的な「できること」と子どもの発達に「必要なこと」のギャップを埋める取り組みが求められている。
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