ファナックは2026国際ウエルディングショーで、溶接図面を読み取り、ロボットのアーク溶接条件を生成するAI溶接エージェントを実演しました。図面をティーチングペンダント内蔵カメラで撮影し、Google Cloud上のGemini Enterpriseなどを使って溶接形状や板厚を読み取る構成です。
重要なのは、AIが単なるチャット支援ではなく、製造現場の「条件出し」とロボット教示に入り始めた点です。熟練者不足が続く溶接工程では、現場知をどう再現し、安全に実行へつなぐかが競争力になります。
図面から溶接条件を提案し、ロボットへ転送
MONOistの報道によると、デモでは説明員がランダムに選んだ溶接図面を撮影し、AIエージェントが脚長、溶接長さ、板厚などを抽出しました。その上で、電流、電圧、溶接速度などの条件を生成し、説明員へ提案します。
提案された条件はロボットコントローラーへ転送され、テスト動作の後に仮付けや本溶接へ進みました。ファナックは2026年12月末の出荷開始を見込んでいます。
工程 | 従来の負荷 | AIエージェント化の狙い |
|---|---|---|
図面確認 | 熟練者が寸法や形状を読み解く | 画像認識とLLMで構造化 |
条件出し | 経験に基づく試行錯誤 | 電流・電圧・速度を提案 |
教示 | ペンダント操作が多い | ロボット動作の生成を支援 |
安全制御 | 外部安全PLCを組み合わせる | コントローラー内のソフトPLCで簡素化 |
治具レス溶接とソフトPLCも実務上の焦点
同社は、ロボット自身がワークを保持する治具レス溶接も示しました。ワークを固定する専用テーブルを減らせれば、省スペース化や段取り替えの効率化につながります。さらに、ワーク角度を変えて重力の影響を抑えることで、溶接品質の安定化も期待できます。
安全面では、ロボット同士の衝突や干渉を防ぐインターロック信号を、ロボットコントローラー内蔵のソフトPLCで扱う構成が紹介されました。AIが工程に入るほど、安全停止や責任分界をどこで担保するかが重要になります。
日本の製造業への示唆
この発表は、Physical AIがヒューマノイドだけの話ではなく、既存の産業ロボットと熟練工程の再設計に直結することを示しています。効果を出すには、図面データ、作業標準、品質検査、設備ログをAIが扱える形に整える必要があります。
一方で、AI提案をそのまま実行するのではなく、初期は人間の承認、テスト動作、品質検査を組み合わせた段階導入が現実的です。AI溶接エージェントは、技能継承と省人化を同時に進める新しい現場ツールになり得ます。
参考:MONOist


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