オーストラリアのバイオテックスタートアップCortical Labsが、培養したヒト神経細胞をコンピューティングリソースとして活用する「バイオコンピュータ」の実用化に向けた施設計画を進めている。AIの急速な普及に伴うデータセンターの電力消費問題に対し、根本的に異なるアプローチで解決を図る取り組みだ。
Cortical Cloudのコンセプト(出典:Ledge.ai)
血液細胞から培養した神経細胞をシリコンチップに搭載
Cortical Labsの「CL1」システムは、ヒトの血液細胞から分化させた神経細胞をシリコンチップ上に配置し、電極を通じて電気信号の入出力を行う仕組みだ。チップ上の神経細胞はネットワークを形成し、電気的刺激に反応して学習する能力を持つ。同社は2022年にこのシステムがゲーム「Pong」を学習できることを実証し、2026年には「Doom」のプレイにも成功している。
電卓以下の消費電力で動作
最大の特徴はその省電力性にある。同社によると、バイオコンピュータ1ユニットあたりの消費電力は電卓を下回る水準だという。AIワークロードの拡大により世界のデータセンターの電力需要が急増する中、従来のGPUベースの計算基盤とは桁違いのエネルギー効率を実現する可能性がある。
メルボルンとシンガポールで施設を計画
Cortical Labsはメルボルンに約120ユニットの施設を計画しているほか、シンガポールではDayOne Data Centersとの提携により最大1,000ユニットの配置を予定。シンガポール国立大学ヨン・ルー・リン医学部での初期展開も計画されている。
実用化への道のりと課題
バイオコンピューティングはまだ基礎研究段階にあり、スケーラビリティ、信頼性、倫理面での課題が残る。しかし、AIインフラの持続可能性という観点から、従来のシリコンベースのアーキテクチャとは異なる新たな計算パラダイムとして注目を集めている。生物学とコンピューティングの融合が、次世代のAIインフラにどのような影響を与えるか、今後の展開が注目される。
参考:Ledge.ai

