トランプ政権は2026年3月20日、人工知能に関する初の包括的な国家政策フレームワークを発表した。州ごとにバラバラだったAI規制を連邦レベルで一元化し、イノベーションを阻害する「過度な負担」を排除する方針だ。子供の安全から知的財産権、言論の自由まで6つの原則を掲げるが、市民権団体からは強い反発も出ている。
トランプ大統領とAI・暗号通貨特別顧問David Sacks氏(出典:TechCrunch / Anna Moneymaker / Getty Images)
フレームワークの背景
本フレームワークは、2025年12月にトランプ大統領が署名した大統領令「国家人工知能政策フレームワークの確保」に基づく。同大統領令は、ホワイトハウス科学技術政策局(OSTP)のMichael Kratsios局長とAI・暗号通貨特別顧問のDavid Sacks氏に対し、州法に優先する連邦規制フレームワークの立法勧告を策定するよう指示していた。
「50州がバラバラに規制するのではなく、一つの国家AIフレームワークが必要だ。今年中に、できるだけ早く」── Michael Kratsios、OSTP局長
6つの指導原則
1. 子供の保護と親の権限強化
プラットフォームは未成年者に対する搾取や自傷行為を防ぐセーフガードを実装すべきとする一方、年齢確認は政府IDや顔認証ではなく「親による証明」を推奨。子供のオンライン安全の責任を親に委ねるアプローチに、児童保護団体からは「もっと強い措置が必要」との声が上がっている。
2. アメリカのコミュニティの保護と強化
AI開発は地域経済と中小企業を強化すべきとし、データセンターの電力コストを一般消費者に転嫁することを禁止。オンサイト発電の許認可迅速化や、AIを利用した詐欺への対策強化も盛り込んだ。
3. 知的財産権の尊重とクリエイター保護
声や肖像を含むクリエイターの権利を保護しつつ、AIの改善のためのフェアユースも認める。権利者の集団ライセンスを奨励し、フェアユースの判断は裁判所に委ねる。
4. 検閲の防止と言論の自由の保護
AIシステムが合法的な政治的表現を抑制することに反対。「真実と正確性」を追求すべきとし、政府による「ジョーボーニング(圧力による言論統制)」に対する私的訴訟権を提案。AIモデルに「truthful outputs(真実の出力)」の変更を要求することも禁止する。
5. イノベーションの促進と米国のAI支配の確保
新たな規制機関の設立には反対し、既存の規制障壁を撤廃。規制の「サンドボックス」環境を提供し、AI導入を加速させる方針。Ted Cruz上院議員が関連するサンドボックス法案を提出済み。
6. 国民への教育とAI対応型人材の育成
労働者がAI主導の経済成長に参加できるよう、スキル研修と人材開発を拡大。非規制的アプローチを優先する。
州法の扱い──何が禁止され、何が許されるか
州に認められること | 州に認められないこと |
|---|---|
一般適用法(消費者保護、詐欺防止) | AI開発・学習の規制 |
データセンターのゾーニング | AI利用への「過度な負担」の賦課 |
州政府のAI調達 | 第三者の違法行為に対するAI開発者への罰則 |
州自身のAI利用に関する法律 | 連邦政策と矛盾するAI固有の責任枠組み |
賛否両論の反応
支持派
「このフレームワークは、米国がAIを恐れる立場からではなく、リードする立場から規制すべきことを認識している」── Daniel Castro氏、Center for Data Innovation
下院のBrett Guthrie議員(エネルギー・商業委員会)やJim Jordan議員(司法委員会)らも支持を表明。Mike Johnson下院議長は「AIの潜在能力を解き放ち、中国に勝つためのフレームワーク」と評価した。
反対派
「トランプ大統領の州AI規制を制限する試みは有害であるだけでなく、深刻な法的問題を提起する。議会はこのアプローチを99対1の票決で大型法案から削除し、17人の共和党州知事が公然と反対した」── Cody Venzke氏、ACLU上級政策顧問
Americans for Responsible Innovationの Brad Carson氏は「テック企業が有害な製品を説明責任なしに発売するための新たな免罪符」と批判。50人以上の共和党議員がトランプ大統領に対し、州AI法の阻止に反対する書簡を送っている。
今後の見通し
ホワイトハウスは「今後数ヶ月で議会と協力し、このフレームワークを大統領が署名できる法律にする」としている。しかし、州法優先の試みは過去に何度も失敗しており、2025年の予算調整法案や国防政策法案からも削除された経緯がある。
YouGovの2026年2月の調査では、米国民の63%が「AIは雇用を減らす」と回答。技術革新と市民保護のバランスをめぐる議論は、今後さらに激化するだろう。
参考:TechCrunch / Roll Call / CNBC / ACLU





