2026年2月、世界のスタートアップ資金調達総額が1,890億ドル(約28兆円)に達し、月間記録を大幅に更新した。Crunchbaseの集計によれば、うちAI関連が全体の90%にあたる1,710億ドルを占めており、生成AI領域への資本集中が一段と鮮明になっている。
3社で83%──超大型ラウンドが記録を牽引
2月の資金調達を押し上げた最大の要因は、3社による超大型ラウンドだ。OpenAIが1,100億ドル(評価額8,400億ドル)、Anthropicが300億ドル(評価額3,800億ドル)、Alphabetのロボタクシー子会社Waymoが160億ドルを調達し、この3件だけで月間総額の83%を占めた。
企業 | 調達額 | 評価額 | 主要投資家 |
|---|---|---|---|
OpenAI | 1,100億ドル | 8,400億ドル | Amazon(500億ドル)、NVIDIA(300億ドル)、SoftBank(300億ドル) |
Anthropic | 300億ドル(Series G) | 3,800億ドル | GIC、Coatue、D.E. Shaw、Founders Fund、ICONIQ |
Waymo | 160億ドル | 1,260億ドル | Alphabet主導 |
OpenAIの評価額は2025年10月の5,000億ドルからわずか4カ月で68%上昇した計算になる。週間アクティブユーザー9億人超、有料ユーザー5,000万人超という急成長が評価を支えている。
10億ドル超のメガラウンドが続出
上記3社以外にも、2月には10億ドル超のラウンドが相次いだ。東京の半導体企業Rapidusは17億ドル(約2,676億円)を調達。ロンドンの自動運転スタートアップWayveはSeries Dで12億ドル(評価額86億ドル)、AIロボティクスのWorld Labsが10億ドル(評価額50億ドル)、AIチップメーカーCerebras SystemsがSeries Hで10億ドル(評価額230億ドル)を獲得している。
音声AI大手ElevenLabsもSeries Dで5億ドルを調達し、評価額は110億ドルに到達した。AI解釈可能性研究のGoodfire(Series B、1.5億ドル)、表形式データAIのFundamental(Series A、2.55億ドル)など、1億ドル超のラウンドが過去最多を記録している。
米国一極集中が加速──全体の92%を占有
地理的に見ると、米国拠点のスタートアップが全体の92%にあたる1,740億ドルを獲得した。前年同期の59%から大幅に上昇しており、AI開発の中心がシリコンバレーに集中する構図が鮮明になっている。欧州・アジアは相対的に存在感が低下しており、WayveのロンドンやRapidusの東京など個別案件は目立つものの、全体に占める比率は限定的だ。
「AIバブル」懸念も浮上──投資家心理に変化
急速な資金膨張の裏で、懸念の声も高まっている。バンク・オブ・アメリカの信用投資家調査では、「AIバブル」が初めて最大のリスク要因に浮上した。投資適格社債の回答者のうち23%がAIバブルの脅威を挙げ、2025年12月の9%から急上昇している。
モルガン・スタンレーは2026年2月のレポートで、AI関連の設備投資が需要を大きく先行している構造的リスクを指摘。2028年までに全世界で2.9兆ドルのデータセンター建設が見込まれるとしつつも、投資家の目線は「AI建設企業」から「AIを活用して成果を出す企業」へ徐々にシフトしていると分析している。
早期ステージは二極化──シード投資は11%減少
全体の記録更新とは裏腹に、資金の偏りも進行している。レイトステージ(後期ラウンド)が資本全体の87.1%を占める一方、シード投資は前年同月比11%減の26億ドルにとどまった。Series AとBの合計は131億ドルと47%増加したものの、1億ドル超のメガラウンドがSeries Aでも40%以上を占めるなど、少数の「勝ち組」に資本が集中する構造が強まっている。
なお、OpenAIとAnthropicの投資家には少なくとも12社が重複しており、Founders Fund、ICONIQ、Sequoia Capital、Insight Partnersなどが両社に出資している。主要VC間で「AI覇権」への複数ベットが常態化している実態が浮き彫りになった。
今後の展望
2026年第1四半期は、2025年通年のAIスタートアップ調達額2,702億ドルを四半期だけで上回る可能性がある。しかし、資本の極端な集中と「バブル」警戒の高まりは、市場の持続性に疑問を投げかける。AIインフラ投資が実際の需要に見合うかどうか──その答えが出るのは2027年以降になりそうだ。
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