OpenAIは2026年3月24日、動画生成AIサービス「Sora」の終了を発表した。消費者向けアプリおよびAPIの提供を停止し、研究の焦点を「世界シミュレーション」へと移行する。公開からわずか5ヶ月での撤退となり、10億ドル規模とされたWalt Disneyとの提携も白紙となった。
Soraアプリのイメージ(出典:TechCrunch)
公開5ヶ月で幕引き──急速な利用者離れ
Soraは2024年2月に初めて発表され、2025年10月にSora 2として一般公開された。iOS・Android向けアプリも提供されたが、ダウンロード数は2025年11月の333万件をピークに急速に減少。2026年2月には113万件と、ピーク時から66%の減少を記録した。
経済的な持続可能性も深刻な課題だった。推論コストは1日あたり約1,500万ドルと試算される一方、アプリ内課金の累計収入はわずか210万ドル。収支の大幅な乖離が事業継続を困難にしたとみられる。
Disney提携の崩壊──10億ドルの夢
2025年12月、OpenAIはDisneyとの大型提携を発表していた。ミッキーマウスやシンデレラなどのDisneyキャラクターを使った動画生成が可能になるとされ、投資額は10億ドル規模と報じられた。しかし、Soraの終了に伴い、この契約は実際の資金移動が行われる前に白紙に戻った。
著作権問題が影を落とす
Soraの短い生涯には、著作権をめぐる問題が常に付きまとった。Sora 2はドラゴンボール、ポケモン、鬼滅の刃といった日本のアニメキャラクターに酷似したコンテンツを無断で生成できることが発覚し、権利者や出版社から強い反発を招いた。OpenAIはオプトアウト機構を導入したが、すでに評判への打撃は避けられなかった。
「世界シミュレーション」への転換
OpenAIはSoraの研究チームを解散させるのではなく、物理世界のシミュレーションとロボティクスへの応用研究に振り向ける。同社の広報は「世界シミュレーション研究に膨大な計算リソースを再配分し、実世界の物理的課題を解決するロボティクスの進化を加速させる」と説明している。消費者向けエンタメから、企業向け・産業向けのPhysical AIへのピボットといえる。
競合は着実に前進
Soraの撤退は、動画生成AI市場の競争環境を明確にした。Runway(Gen-4)は品質面でリードを維持し、中国発のKling 3.0は低コストで品質を追い上げる。Google Veo 3は蓄積した計算資源の優位性を活かし、オープンソースのSeedanceも存在感を増している。Soraが市場に生み出していた戦略的な不確実性が解消されたことで、各社はより明確な方向性を持って投資を進められるようになった。
指標 | 数値 |
|---|---|
サービス期間 | 約5ヶ月(2025年10月〜2026年3月) |
ピーク時DL数 | 333万件/月(2025年11月) |
最終月DL数 | 113万件/月(2026年2月、-66%) |
推定日次推論コスト | 約1,500万ドル |
累計アプリ内収入 | 約210万ドル |
Disney提携規模 | 10億ドル(未実行で白紙) |
Soraの終了は、生成AI時代における消費者向けサービスの難しさを象徴する出来事だ。技術的な優位性だけでは持続的なビジネスモデルの構築は難しく、コスト構造と市場ニーズのバランスが問われている。OpenAIの次なる一手となる「世界シミュレーション」研究が、どのような成果をもたらすか注目される。
参考:Impress Watch / TechCrunch / Variety

